【ガイドライン・論文紹介】Wilderness Medical Society Clinical Practice Guidelines for Diabetes Management

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原文リンクはこちら: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7510348/

このガイドラインでは、登山やトレッキングなどの野外活動における糖尿病患者の事前準備、血糖管理、治療調整について述べた論文となります。

糖尿病はインスリン分泌低下、インスリン抵抗性、またはその両方により血糖値が上昇する疾患であり、脳血管心臓疾患や、視力障害、皮膚障害など血管障害に伴う合併症はもとより、血糖値事態による意識障害、消化器症状などさまざまな症状を引き起こします。

野外活動では運動強度、気温、標高、食事内容、薬剤等の使用条件によって血糖管理が異なるため、その準備や調整はやや複雑です。

ではガイドラインを見ていきましょう。

【運動時の血糖の動きはどうなっているのか】
長時間の有酸素運動では低血糖を起こしやすく、短時間や高強度運動などを含め、無酸素運動では高血糖になりやすいとされています。また、運動後も最大48時間程度インスリン感受性が上昇し、夜間低血糖のリスクがあります。

【事前準備】
糖尿病患者では、通常の治療状況に加えて、主治医または糖尿病内科専門医との事前の相談、運動計画、インスリンの調整、食事・水分のとりかた、および緊急時対応計画が必要です。万が一のために、医療情報、糖尿病管理計画、緊急時対応計画も携行すべきとされています。

【環境による血糖への影響】
・高所環境

4000m以上、特に5000m以上の高所ではインスリン必要量が増える可能性があります。急性高山病の症状は低血糖・高血糖・ケトアシドーシスと紛らわしいため、高山病症状がある場合は血糖値とケトンを頻回に確認することが望ましいとされます。なお、ダイアモックス(アセタゾラミド)はより脱水・アシドーシスの懸念があり慎重に使用しなければなりません。また、高山病で使用されるステロイド(デキサメタゾン)は高血糖をきたすことがあります。
暑熱環境暑熱環境ではインスリン吸収が増加し、インスリン自体も高温で失活する可能性があるといわれています。また、糖尿病患者では発汗や皮膚血流反応が障害されることがあり、熱中症リスクも合わせて上昇します。

【水分や食事の取り方】
・炭水化物摂取
運動時は低血糖予防のため炭水化物摂取増加、またはインスリン減量が必要となります。活動の強度、活動持続時間、直前の血糖値、インスリン投与状況に応じて個人個人で調整が必要です。また高所ではエネルギー維持と高山病予防の観点からも十分な炭水化物摂取が重要であり、日常生活における糖尿病の栄養摂取基準とは異なります。
・水分管理
高血糖状態では浸透圧利尿により脱水や電解質異常を来しやすいため、糖尿病患者では、気温、標高、運動強度、尿中ケトンの有無など、全体的な体調に応じて水分摂取を行う必要があります。

【内服薬やインスリンの調整】
・インスリン

運動前後の基礎インスリン減量、追加インスリンの減量、インスリンポンプ使用時はその調整などが必要になります。しかしながら、インスリン必要量は個人差が大きく、野外の環境によってはむしろインスリンの追加が必要となるため、事前に主治医とよく相談しておくことが必要です。
・内服薬
メトホルミン、SU剤、グリニド薬(速効型インスリン分泌促進薬)、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬などは野外活動の禁忌ではありませんが、脱水、下痢、低血糖、尿路感染、正常血糖ケトアシドーシスなどの薬剤ごとのリスクを理解する必要があるとされています。

【結論】
◎適切に準備すること、個人個人の病状に合わせて調整することで野外活動や高所活動に参加可能
◎重要なのは、事前の病状評価や、血糖変動パターンの把握、低血糖や高血糖などへの対応
◎同行者がいた場合には、低血糖や高血糖時の症状への対応の教育が大切

糖尿病を治療していたとしても事前に準備することで十分に登山に参加が可能です。ただし、山岳医療、野外医療では資源が限られていること、場所の問題などがあり、上記の対策や治療が行えないことがあります。

今回の紹介の中でお伝えできなかった部分も多いため、一度ガイドライン本文を読んでいただくことをお勧めします。

引き続きJMMC 日本山岳医療協議会では山岳医療、野外医療の関わるガイドラインや論文を紹介してまいります!
(毎週金曜日更新)

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この記事を書いた人

日本山岳医療協議会JMMC代表

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